遠くの人へ気持ちを伝える手段が手紙しか無い時代というのはたしかにあったのだなあ、などとあほらしいことを本気で思いました。
何度も推敲して、翌朝また読み直したら出す勇気さえなくなってしまう、なんて容易に想像できます。そうやって相手に読まれることのなかった手紙がたくさんあったんだろうなあ。
ポストに出したとしても、それがきちんと相手の手に渡るとは限りません。今でもそうだけれど。わたしもシカゴ市内で引っ越したとき、前のアパートに届いたハガキが、転送されずに送り返されてしまったことがあります。国際郵便のハガキは、返送されるとそのまま処分されてしまうようです。受け取るはずだったメッセージはわたしまで届かず、それはそれは哀しくなった。
内容だけでなく、便箋や切手、書いた人の字など、一つ一つが個性の塊である手紙は、愛おしく、誰かの宝物にさえなれるものだと思うのです。
芥川龍之介や、志賀直哉の手紙も載っている「お手紙ハンドブック」という本、おすすめです。